イタリアの友人から電話がかかってきて1時間以上話し込んでしまいました。
おとといイタリアのコンテ首相が、3月9日から始まったロックダウンを5月4日から段階的に緩和していくと発表したばかりなので、状況が少しよくなったのかな…と思っていたのですが、どうやらそうでもないらしいのです。
イタリアの飲食店は6月1日から再開
どうしたのかなと思ったら飲食店や店内飲食ができるレストランやバールと呼ばれるカフェなどが飲めるお店の再開は6月1日からと表明したのでショックを受けた。とのこと。
彼女はバールに勤めています。比較的大きな会社が経営しているお店なので給料の半額は保証されているらしい(600ユーロほど)のですが、それもごく恵まれたケースなのだとか。
彼女の知り合いの飲食店を経営している人達は店を畳まなければならないかもしれない…と絶望しているらしいのです。
白玉:「でも、あなたが勤めてるバールのようなところは再開したら、すぐに人が集まるんじゃない?」
友人:「確かに一杯1ユーロ程度のカフェを飲む場合は人がすぐに戻ってくるかもしれない。だけど、手袋をはめてマスクをしてプラスチックの板ごしに注文をしてお客さん同士は1m以上の間隔を空けなくちゃならない。そんな状態で楽しめると思う?
白玉:「確かに。もっとひどいのがレストランだよね」
友人:「その通り。今はどの店もテイクアウトでやり過ごそうとしてるけれど、そもそも外出が厳しく制限されていて、町中に警察官がウロウロしているから、買いに出かけることもできないわよね。
それにコロナがおさまった後、仕事があるかどうか分からない状態で、1皿15ユーロ、20ユーロの料理を誰が頼むと思う?いまは、みんながお金を使うことを恐れているの。
それに、私たちが二人でレストランに行ったとしても二人の間は透明の板でさえぎられてるの。そんなんじゃ、楽しくない」
白玉:「そうだよね…」
友人:「そんなわけだから、私もすっかり運動不足。最近は近所の友達と食後のウォーキングをしてるんだけど、だんだんメンバーが増えてきちゃって。今日は5人になっちゃったんだけど、そのなかに警察官がいたからまあ、いいかなって」
白玉:「………(笑)」
友人:「で、その中の一人のマンションの階下の駐車場前でみんなでおしゃべりしてたら住民のおじいさんに怒鳴られて。
『おまえら、若い奴らはなにも分かっちゃいない!なにをしていやがるだ?俺たち年寄りをリスクにさらしているんだぞ!まったくお前らより馬鹿なやつは見たことがない!』。
でも、そのおじいさんは毎日、友達をのせて車で外出してるのよ。車にのるときはできるだけ1人で、誰かをのせる場合は1人まで、さらに後部座席にって言われているのに、そのおじいさんは助手席に友達をマスクもせずにおしゃべりしながら町のなかをウロウロしてるのに」
白玉:「たまったもんじゃないね。私も仕事中、数分外にでたとき、マスクをしてなくて通りすがりのおじいさんにからまれそうになった。マスクしてない人は周りにもたくさんいたのに、わざわざ遠くから近寄ってきて言われたよ。どうして、こういうのってみんな高齢者なんだろ…。そういえばパスクワ(イースター・復活祭のこと)はどうなったの?ミサはやったの?」
友人:「やるわけないじゃない。教会が開くのはお葬式の時だけよ。参列者も5人までだったかな?決まってるの」
白玉:「日本ではコロナで入院してしまうとその後、家族に会うこともできなくて火葬されて遺骨だけが帰ってくるんだって…。あんまりだよね。最後のお別れもできないなんて、残された家族は気持ちに折り合いがつけられないし、前を向けない」
友人「…。そうなんだ。イタリアでもたくさんの死者が出た地域では、埋葬をする場所が足りなくなって隣の市の墓地に埋葬されたって人もいたからね…。亡くなった後も頻繁にお墓参りに行けないんじゃ遺族も悲しむでしょうね。遺骨になって帰ってくるのはとても悲しいけど、今になってみると土葬よりいいのかなと思うわ」
イタリアの葬儀、埋葬
ちょっと意外に思われるのですが、イタリアはまだまだ火葬をする習慣がありません。
また、墓地は共同墓地であり公営の墓地しかないため、誰でも原則として住んでいる町の墓地に埋葬されます。
どの町でも、ちょっと歩けば行ける距離に墓地があるので、毎週日曜日の午後、お墓参りにいく人が多いです。中高年層だけですけど…。それなのに隣の町の墓地に埋葬されてしまう…となると、かなりご家族はショックでしょうね。
さらに、イタリアの場合、病院で亡くなるとご遺体が家に帰ってくることはなく、そのまま葬儀を執り行う地元の教会へ棺が運ばれ、そこから町の墓地に直行、すぐに埋葬されてしまいます。勝手に病院から遺体を家に連れ帰ると罰せられるのだそうです。
最近は土地が少なくなってきているので、墓地の土地にそのまま棺を埋めるわけにはいきません。言葉は悪いのですが、コインロッカーのようなイメージで棺をおさめる場所が用意されています。
各スペースへ棺をおさめ、コンクリートで塗り固めたあと、故人の名前が彫られ、写真が添えられた大理石などでできたプレートをはめ込む感じです。
こんな状態ですから、病院で亡くなったらもう家には帰って来られないというのは比較的イタリア人が慣れていたといっていいのかもしれません。
彼女とは2年来の付き合いでお互いの家を行き来したりしている仲。
去年お世話になったこともあり今年は彼女が日本に来たい!というので、私が案内する予定でいたのですがそれも当分の間延期になりそうです。
白玉:「それでも、お互いまだ無収入になったわけじゃないし、住むところもあるんだから恵まれてると思わないといけないね。世界中がこんな状態なんだし、どこに逃げるわけにもいかないからね」
友人:「そうね。こうやって話をしてたら、そう思えてきた。お互いできることをやって頑張ろう!」
電話がかかってきた時よりも、彼女の声がちょっと明るくなっていたことに胸を撫でおろしつつ、また近日中に話そうね。と言って電話を切りました。
本当にこうやって仲の良い友人と、お互い元気で電話で話せることも幸せなことなんだなとしみじみ。
afterコロナは色々なことが一変するとも言われていますが、それを今から悲観して嘆いても仕方ないので、エッセンシャルワーカーの方に感謝しつつ、なるべくstay homeでがんばりたいですね。