白玉日記

40代女性が楽しく快適に過ごす方法を模索。でも若い子にも読んでほしい。

エスプレッソの国の「Sturbucks」

www.yomiuri.co.jp

毎朝、「これを飲まないとスイッチが入らない」というエスプレッソを飲みながら新聞を取り上げると、エスプレッソをブホッっ吹き出しそうなニュースが飛び込んできました。率直に言って、こう思ったわけです。

 

いい度胸してるな……(遠い目)スタバ。

 

とうとう来たか……。イタリアにスタバ!これって行ってみれば、海外資本の日本茶のお店がオープンするくらい違和感のあること。

 

でも、すでにミラノのドゥオーモ近くにスタバがオープンしてるそうで。こちらは2015年のhuffingtonpostoの記事です。

 

www.huffingtonpost.it

ベネトンの強力なライバルになる(なった)であろう、ZARAの進出時のことを振り返りながら、とうとう、イタリアにもスタバがオープンする!

 

当時のことを覚えてますが、ベネトンは……zaraが来る前に衰退している様子が明らかでしたからね。店の試着室はほこりと髪の毛だらけ、ハンガーにぶら下がっているニットにはべったりとファンデーションの跡がついている……。

 

いいなと思ったシャツにファンデじゃないけど、汚れを見つけ「これ、汚れてるけど」というと、ベネトンの店員は「洗えば落ちるじゃない!」と言って売りつけようとしましたから。「いや、いらないよ」と言って断ったことは言うまでもありません。

 

話をスタバに戻しましょう。

 

ダメとは言わないけど、「イタリア人気質×スタバ」がマッチするとは到底思えないんですよね。

 

でも、ミラノにオープンするには地の利があって、これまでイタリアにはなかった商談に使えるような区切られた空間で、よくつながるWifiが飛んでいる……という場所がこれまでなかなかなかったことを考えると、銀行家や弁護士、実業家などが多いミラノでは流行るんじゃないかとふんでいたらしいのです。

 

スタバのことを「紙コップに入った歩きながら飲めるコーヒーを提供するアメリカンコーヒーの神話」と書いているのは、イタリア人らしい表現で大好き。フラペチーノのことを「ヤンキー版の(コーヒーの)混ぜもの」とかいているのも笑えます。

 

では、なぜイタリアでスタバの経営が難しいのか

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笑ってないで、具体的になぜ、イタリアでスタバが難しいのかをお話していきましょう。

コーヒーの味が薄い

これはもう、言わずもがな、ですね。エスプレッソしか知らない世代のイタリア人にとって、アメリカンコーヒーは『汚れた水』。味がしないし、香りもしない。

 

イタリア人の友人がが日本に来たとき、スタバのアメリカンコーヒーを飲んでもらったら、ものすごく嫌な顔をしてました。エスプレッソもダメでした。「もう1回、マシンの設定を変えて淹れなおしてほしいよ」というくらい。

 

でも、イタリアにいる外国人の中には「たまにアメリカンコーヒーが飲みたくなる」って人が多いんです。私もよくドイツ人の友達の家にいって、フィルターで落としたコーヒーを淹れてもらって飲んでました。「これもアリなのにねー、なんで分からないのかな」と2人で言いながら。

 

あるバールでメニューにCaffe' americanoと書かれているのを見つけ、「あ、アメリカンコーヒーあるの?」と頼んでみたら、普通のエスプレッソとマグカップ、小さなポットに入れた熱湯が出てきて驚愕。自分で薄めて飲めってことらしい。

値段が高い

エスプレッソ1杯の値段は90セントから1ユーロくらいが相場。ミラノの中央なら1.5ユーロくらいはするかもしれない。イタリア語の記事でもエスプレッソの3倍以上」と書かれています。

 

フラペチーノが日本で500円以上するのを鑑みてもイタリア人がカフェにそれだけ出すとは思えません。前述のイタリア人の友人もスタバの価格表を見て文字通り目を丸くしていました。

 

コーヒーを「ゆっくり飲む」という文化がない」

エスプレッソには「特急」というような意味がありますが、この名前の由来は「コーヒーはさっと出されてさっと飲むもの」だから、と言われています。だから、コーヒーを飲む店であるバールの滞在時間も、それほど長くありません。

 

コーヒーだけをのむなら、5分くらい。カウンターで飲んでバリスタとちょっと話して挨拶して出ていくって感じ。

 

カフェを置いておいたら、冷めちゃうでしょ?って話。イタリア人にとって、ピッツァとカッフェだけはアツアツでないとダメなんですよね。

 

私はイタリア滞在初期、バールのカウンターでエスプレッソの飲みかけを置いて新聞を取りにいったら、その間にバリスタに捨てられたという経験があります。

 

「まだ飲んでたのに!」というと「カッフェはタラタラ飲むものじゃないんだぜ!」と言われました。

紙コップを嫌がる

食に関することにものすごいこだわりがあるイタリア人。食器にこだわりがあります。ワインを紙コップで飲むのが嫌だとか、紙皿がキライという人もいます。

 

エスプレッソ用のカップもまたしかり。それぞれこだわりがあって、バールにも陶器のものと、ガラスのものが用意されていることがほとんどです。スタバの紙コップ……どうかなぁ?

 

私には違いがよくわからないのですが、陶器の方が冷めないとか、唇が触れたときの感覚(陶器は厚みがあって、ガラスは薄い)の好みで選ぶ人もいます。

 

「カッフェ・マッキアートをガラスのタッツァ(カップ)で」と頼んでいる人、見たことあるし。でも、「ガラスや陶器が唇に触れる感触がキライ」ということで、家でも紙コップを使っている変わり者イタリア人に遭遇したこともあります。

 

あとは単純に、熱い飲み物にフタをして飲むという危険行為がイタリア人にできるのか。心配です。やけどしないで……。

 

スタバのフィロソフィーを理解できるイタリア人店員の教育が難しい

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ある意味、一番難しいのがコレじゃないかと。スタバって日本でオープンしたとき店の清潔さや雰囲気、店員の接客態度などに感動しませんでした?あれをイタリア人が再現できるのだろうか心配です。

 

飲み物をマニュアル通りに忠実に淹れる、という行為も大丈夫なんだろうか。

 

以前、マクドナルドでポテトを頼んだら、冷凍庫の臭いがしたことがありましたし、お持ち帰りようの紙袋の中に、ポテトをSサイズとかMサイズの容器から逆さまにざざーと流し込んでいる(!)店員も見たことがあります。

 

マックやスタバのような世界的なチェーンなら、絶対にマニュアルがあるはず。それに従うことができるのか……。言われたとおりにやるっていうのが、なかなかできない人たちだからなぁ。

でも、素晴らしいイタリアのカフェ文化

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馬鹿にしているように思えるかもしれませんが、白玉はイタリアのバール文化が大好きなんです。だから、スタバに侵食されたくない。(されないと思うけど)

 

イタリアのバールって特別な空間なんです。憂鬱な朝も、バールに1歩を踏み入れてカフェとコルネットの香りが漂ってきて、ボンジョールノーという言葉が飛び交うのを耳にすると、それだけで幸せな気分になる。

 

住んでいた家の近くにコルネットやブリオッシュが超おいしい店があって、いつも東京駅近くのコンビニにくらい混んでいるんだけど、ジョコビッチに似たバリスタ(イタリア人だけど)がお客さん1人1人の注文を聞いて正確に仕事をこなしてた。

 

私は引っ込み事案なので、列の2列目くらいでいつもマゴマゴしてたんだけど、必ずジョコビッチが気づいてくれて「シニョリーナはカプチーノとなんにする?今日はクレーマシャンテリーのコルネットがあるよ」といつも注文するメニューを覚えていて、声をかけてくれるのが嬉しかったし、プロフェッショナルだなあ……といつも感心してました。

 

そう。イタリアのバールっていうのは、イタリア人らしい職人気質に触れられる空間でもあるんです。

 

あとは、お客さん同士が言葉を交わす雰囲気も好き。チャーオと言いながら、後ろから抱き着いたり、「昨日のユーヴェのPKはなかったな」とか言いながら読みまわされたコリエッレ・デッロ・スポルトをめくったりする。

 

カラビニエリとかポリツィア(警察官)が普通に仕事中にコーヒーを飲みに来るのも楽しい。財務警察の踏み込みのこともあるけど。

 

近所のおじいさんとかおばあさんとか、顔見知りに挨拶して「旦那さん、元気?」とか「マリオは具合よくなった?」とか言いながら、「聞いてよ、それがね…」って話がはじまり、泣いちゃうおばあさんもいる。すると、バリスタも手を止めてカウンターの外に出て、おばあちゃんをハグしてなぐさめてあげる。

 

スタバでみんながスマホやPCを除きながら、無言でカチャカチャやる光景がイタリアに広まるのかと思うと、ちょっと寒気がする……。

 

もちろん、イタリアでも10代の子たちのように、海外ドラマやアメリカのポップスをいつもMTVで見ながら育ってきて、アメリカの文化に憧れる子たちもいる。彼らはこぞってスタバに出かけるだろう。かつての私たち日本人のように。

 

ただ、ミラノではラヴァッツァやイリーといったイタリアのカフェメーカーが旗艦店をオープンして対抗しようとしているらしい。今度、ミラノいったら、是非、そちらに入ってみようと思っています。